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 自然と共生する食文化の叡智 

更新日:7月14日

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-タイハーブとタイ料理との深い関係- 


タイ料理は、世界的に高い評価を受けているエスニック料理のひとつです。その魅力は、味覚の基本となる辛味・甘味・酸味・塩味・苦味といった五味が絶妙に調和した複雑な味わいにあります。これらの奥行きある風味を支えているのが、タイ料理における「ハーブ」の存在です。 

タイハーブは、単なる香味野菜ではなく、古くから医療的・文化的な意味を持って、いにしえの時代から生活に取り入れられてきました。 

特に料理においては味や香りの演出を担いながら、心身の調子を整える「自然の薬」としても重用されてきた背景があります。タイ料理でのハーブの重要性は、タイという国の自然環境や歴史、そして伝統医療といった要素と深く結びついており、単なる調味料の域を超えた存在であると言えるでしょう。 


〇 ハーブと共に歩んできたタイの食文化 


タイには古くから「食は薬である」という考え方が根付いており、ハーブを用いた料理は日常的な健康管理の一環とされてきました。これは、中国医学やインドのアーユルヴェーダなどの伝統医学の影響を受けながら、タイ独自に発展した「タイ伝統医学(サムンプライ)」という医療体系に基づくものです。 

この考えは、現代の家庭料理においても顕著に見られます。たとえば、代表的なスープである「トムヤムクン」には、レモングラス、ガランガル、カフィアライムやバイマックール(こぶみかん)の葉などのハーブが不可欠です。いずれも料理に爽快な香りや辛味、酸味を加えるだけでなく、消化器系の働きを助け、発汗を促し、身体の巡りを整えるといった効果があるとされてきています。 

このように、タイの家庭料理に用いられるハーブは、味覚的な楽しみとともに、健康維持や予防的な目的を兼ね備えた「機能性食品」としての役割を果たしているのです。 


〇 自然環境とともに発展したハーブの知恵 


タイは、年間を通じて高温多湿な気候にあるため、食品の保存や衛生に対する工夫が必要とされてきました。タイ料理におけるスパイスやハーブの多用は、まさにそうした知恵か

ら生まれたものです。 

たとえば、バジル、唐辛子、ニンニク、ターメリック、ショウガなどの香辛料は、抗菌・防腐作用があるとされ、料理の保存性や安全性を高める目的でも用いられてきました。また、レモングラスやバイマックルーは、独特の香りによって食材の匂いを中和し、食欲を刺激する効果もあります。このように自然環境と結びついたハーブの活用は、タイ料理の風味の根幹を成すと同時に、人々の健康と安全を守る生活の知恵でもあったのです。 


〇 味覚と身体の調和を目指す料理哲学 


タイ料理が五味のバランスを重視する背景には、「身体の調和=健康」という考えがあります。そのため、伝統的な医学理論に基づき、身体を構成する要素や季節、気候、体質に応じて、食材や調理法が選ばれることも少なくありません。 

このような考え方は、現代で言う「ホリスティック・アプローチ」にも通じており、食を通じて身体全体の調子を整えることが重視されてきました。 

中でもタイハーブは特に重要な役割を担っています。例えば、バジルは血行促進やリラックス効果、ターメリックは抗酸化作用、ガランガルは消化促進といった、身体への多様な働きが今に至るまで伝承し、活用されています。料理に使用される際には、これらの効果を活かしながら、風味のバランスを取るための繊細な技術が求められるのです。 

このように、タイ料理は「美味しさ」だけでなく、「心身の調和」を目指す総合的な食文化であり、その基盤にあるのがタイハーブの存在なのです。 


〇 科学的見地から見直されるタイハーブの機能 


近年では、タイの伝統的なハーブに含まれる成分の科学的研究が進み、健康や美容に対する有用性が改めて注目されるようになりました。 

たとえば、バタフライピーに含まれるアントシアニンは、視覚機能のサポートや抗酸化作用があるとされ、目の健康やエイジングケアの分野で活用が期待されています。また、レモングラスに多く含まれるシトラールは、鎮静効果や抗菌作用があることが報告され、アロマテラピーやハーブティーとして人気を集めています。 

このように、タイハーブは「民間療法」としての歴史的背景を持ちながらも、現代の健康志向や自然派志向に合致した形で新たな価値を提供し始めています。タイ国内においても、政府や大学機関が伝統医療とハーブ産業の研究・開発に注力しており、持続可能な医療資源・健康資源としての活用が模索されています。 


〇 タイハーブが象徴する「癒し」と「つながり」 


タイハーブの文化は、単なる健康管理の道具ではありません。香りや味わいを通して、食事を共にする人々の間に自然な会話と笑顔をもたらし、心身ともに癒しを与える存在でもあります。 

特に家庭料理では、体調や気分に合わせて辛さや酸味を調整するなど、食べる相手への思いやりを表現します。料理を通じて相手を気遣い、健康を願うという文化的姿勢は、ハーブの存在によってより豊かに育まれてきたといえるのではないでしょうか。 

ハーブの香りは、単に味覚にとどまらず、嗅覚を通じて記憶や感情に働きかける作用もあります。だからこそ、タイ料理を食べるとどこか懐かしさや安心感を覚える方が多いのかもしれません。それは、ハーブが文化の記憶と深く結びついているからにほかなりません。 


〇 タイのハーブとともに、心身ともにより健やかな日常を 


私たちは、タイ料理とハーブの深い関係性を広く知っていただくとともに、現代の生活の中に取り入れることで、心身の調和をはかる手助けができればと願っています。 

ただ「本場の味」を再現するのではなく、その背景にある歴史、文化、思想、そして自然との共生の在り方までを含めて日本へご紹介することが、私たち「一般社団法人日本タイハーブ協会」の使命です。 

自然の恵みであるハーブを日常に取り入れることは、身体にとってだけでなく、心にとっても素晴らしい選択となるでしょう。これからも、ハーブの可能性を発信し、より多くの方々にタイの知恵と味わいをお届けしてまいります。 

 
 
 

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