タイ伝統医学の新たな展開 ―国家医療システムへの統合が進むタイ
- 日本タイハーブ協会
- 3 日前
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タイでは現在、伝統医学を現代医療へ積極的に取り入れる取り組みが進められています。今回は、近年発表された2つの動向をご紹介します。
① ルーシーダットンの医療化・体系化
タイ伝統医療・代替医療局(DTAM)は、新たな方針として、これまで「健康維持のための体操・運動」として広く親しまれてきたルーシーダットンを、より医療的な活用へ発展させる取り組みを進めています。
従来から伝わるポーズを整理・体系化し、
特定のハーブティー
症状別に選定されたルーシーダットンのポーズ
を組み合わせ、病院や公共医療機関で"処方"するモデル事業が開始されています。
さらに注目されるのは、伝統療法として継承するだけではなく、科学的な検証も進められている点です。
2023年末から2024年にかけて実施された臨床研究では、特定のルーシーダットンの実践により、
空腹時血糖値(FPG)
HbA1c
炎症マーカー
の改善に寄与したことが報告されています。
現在、対象として整理されている主な現代病は以下の12分野です。
オフィスシンドローム
腰痛
膝痛・関節痛
不眠・ストレス
眼精疲労
頭痛・偏頭痛
消化不良・便秘
糖尿病予防(血糖管理)
高血圧・循環器系疾患
呼吸器疾患(喘息など)
しびれ・末梢神経痛
高齢者の筋力低下(フレイル予防)
これらの取り組みからは、タイが伝統医学を保存するだけでなく、現代の健康課題へ対応できる医療資源として活用しようとしている姿勢がうかがえます。
また、日本では伝統療法が代替医療として位置付けられることが多い一方、タイでは国家医療システムの中へ統合する方向で制度整備が進められている点も大きな特徴です。
② 病院で進む「ハーブ医薬品」の活用拡大
もう一つ注目されているのが、病院におけるハーブ医薬品の活用拡大です。
タイ政府は現在、「ハーブを病院で活用する主要な医薬品の一つとする」ことを目標に掲げ、国家必須医薬品リスト(NLEM)の拡充を進めています。
2026年3月の会議では、新たに40品目以上の医薬品が追加・改訂され、30バーツ医療制度(国民皆保険制度)において利用できるハーブ医薬品の選択肢も拡大しました。
特に注目されているハーブは、
ファタライジョン
カミンチャン(ウコン)
プライ
の3種類です。
ファタライジョンは、抗ウイルス・抗炎症分野での活用が進み、風邪だけでなく初期呼吸器疾患への標準的な選択肢の一つとして位置付けが強化されています。
カミンチャン(ウコン)は、消化器疾患や血糖リスク管理などを目的とした活用が進められ、日常的な健康管理を支えるハーブとして再評価されています。
また、プライはスパ用途だけでなく、整形外科領域における鎮痛・消炎を目的とした湿布薬や外用剤としても利用が広がっています。
国家経済と伝統医学
この政策の背景には、医療政策だけでなく国家経済の視点もあります。
タイ政府は、西洋薬への依存を軽減することで年間約26億バーツ(約110億円)の医療費削減を見込んでおり、その削減分を、
ハーブ研究
臨床試験
製品開発
へ再投資する循環の構築を目指しています。
一方で、これまでタイの公共医療全体で使用される薬剤費約705億バーツのうち、ハーブ医薬品が占める割合は約1.5~2.2%程度であり、30バーツ医療制度では1%未満だった時期もありました。
背景には、
西洋薬への信頼
即効性への期待
医療現場での従来の処方慣行
に加え、
処方プロセス
保険請求
管理体制
が西洋薬より複雑であったことなどが挙げられています。
また、ハーブ医薬品は「自然由来だから安全」というものではなく、効果が期待できる一方で、
体質による違い
他の薬との飲み合わせ
継続的な管理
定期的な診察
など、医師による適切な管理が重要となる場合もあります。
日本タイハーブ協会として
今回ご紹介した動きからは、タイが「伝統医学を守る」段階から、「現代医療と融合し、国家システムとして再構築する」段階へ進みつつあることがうかがえます。
ルーシーダットンの体系化やハーブ医薬品の活用拡大は、タイ伝統医学が経験や伝承だけではなく、科学的検証や制度整備を伴いながら発展していることを示す事例と言えるでしょう。
今後も日本タイハーブ協会では、タイ国内の最新動向を継続してお伝えし、日本におけるタイハーブ・タイ伝統医学の理解と普及につながる情報を発信してまいります。



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